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こみねもすなるだいありー

全然何にも怖くない

忘れてもいいよ

サークルに入ったのは、自分と同じような女の子が2人いたからだった。2人とも地方から出てきた、独り暮らしをしている女の子。性格や容姿は全然ちぐはぐだけど、なんとなく、仲良くなれそうだと思った。

 
よく一緒に食事をした。パスタを食べながらそれぞれ課題の話をしたり、たこ焼きを食べながらTVの話をしたりした。そのあと、3人とも暗い部屋に電気をつけに帰る。自分だけが寂しいんじゃないと思うと少しだけ気が紛れた。私たち3人、誰も器用ではなかった。なかなか素直に言いたいことが言えず、気持ちが上滑っているように感じたこともあった。
 
人に好きだと言ったことがないから、2人に好きだよと言っていいかわからなかった。
 
サークルの後輩が、卒業を間近に控えた私たちを招いてコンパを開いてくれた。今までは、先輩としてそれなりにしっかり後輩の面倒を見なければと思っていたけれど、その日はそれを忘れてはしゃいだ。私は強いお酒を何も考えずに飲んで、足ががくがくになった。
 
会がお開きになったあと、自然に3人で夜の街を歩いた。まだ帰りたくないね、と、ひとりが言った。うれしくて、手近なお店に入ってまた飲みなおした。
 
来年度から、それぞれ仕事を始める。私以外のふたりは、ふるさとで就職した。引っ越しの日取りを教えてもらった。もうすぐいなくなってしまうのが、なんだかよくわからない。
 
色々考えて、偶然同じ街へ出てきて、同じ学校へ通って、また別れ別れになるのが、なんだかすごくいとおしかった。小さい頃、向かい側に住んでいた男の子を思い出した。無邪気に彼との時間をすごして、いろんなことをして遊んだけど、あるときいきなりいなくなってしまった。その子が何故か頭をよぎった。2人のことも、私はあの男の子と同じ記憶の箱に入れるのかもしれない。
彼女たちのしゃべり方や笑い方、爪をさわる癖、お気に入りらしいリップの色、少し傷んだ髪の毛。そういうものが、箱にあふれていた。もし彼女たちが私のことを忘れてしまっても、もしかしたらあるとき、私が好きだったものや私の身に付けていたものを目にして「これだれが好きだったんだっけ」「これだれが持ってたんだったっけ」とおもってくれるかもしれない。それでいい。それで嬉しい。
 
結局終電を逃し、始発を待つためにカラオケボックスに入った。朝5時、最後に何を歌おう?となって、ひとりの女の子がアンジェラ・アキを転送した。彼女のふるさとと、アンジェラ・アキのふるさとが同じらしい。マイクを持たずに、揺れながら歌った。あなたの夢を叶えて、とアンジェラ・アキは歌う。歌詞どおり私たちもそう歌った。彼女たちに、この先の私自身に、そうなってほしいと思った。
 
 
 
 
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