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こみねもすなるだいありー

全然何にも怖くない

他人に期待する技術 - 『百万円と苦虫女』


百万円と苦虫女


「100万円貯まったら違う街へ引っ越す」というルールで、街から街へ旅をする女性の話。人生ゲームのようだなと思った。100万円貯まるまでが1ターンで、ターンが回ってきたらルーレットを回す。そういうゲームのルールを作って生きているんだなと思ったけれど、なんかそれもちょっと違うかも、と、見終わってから思った。

「他人に期待する」ことには、技術が要ると思う。誰かを好きになることも、家族と一緒に暮らすことも、友達と付き合うことも、全て「他人に期待する」ことだと思う。この人は自分にとって何かよいことをもたらしてくれるだろうと思うことは、みんな自然にやっていることのように見えて、実はそうでない。習わなければできないことだと思う。それをし続けなければ、忘れることだと思う。鈴子はひょんなことすぎるきっかけでその「他人に期待する」技術のメモリーをまっさらにせざるを得なかった。就職が決まらなかったとき。知らない男と共同生活せねばならなくなったとき。その男にかわいい猫を殺されたとき。生まれた街を歩いて嘲笑を受けたとき。少しずつ鈴子の「他人に期待する」メモリーが破壊されていき、そして全部が消えた。

自分だけを信じて生き続けることは苦しく、そして、それが本質なのかもしれないと思った。親に愛され、友達を作り、恋人に大切にされる人間が、自分だけを信じている人間とガチンコタイマンマッチをすれば、後者が勝つんじゃないかと思う。強く生きるとはそういうことなのかもしれない。でも、きっと別に「強く生きる」必要なんてない。「よりよく生きる」必要もないし「うまく生きる」必要もない。鈴子が本当の意味でそう思えたとき、彼女はその街で、100万円の旅を終わりにするんだろうなと思う。


2017/05/05

踊れる靴をバッグへ入れて - 『ラ・ラ・ランド』


「ラ・ラ・ランド」Audition映像


「踊れる靴をバッグへ入れておくべきだな」と思った。夕闇迫るなか、ミアは鞄に入れていた、踵の低い踊れる靴でセブと踊る。今ここで踊りたいわというテンションになったら、さあ踊りましょうと曲が鳴りはじめたら、すぐ踊れる心づもりが大事なのかもしれない。色んな人が「ミュージカルはよくわかんない、普通に過ごしてていきなり曲が流れだして歌って踊るとかないし」と言うけれど、いや、普通に過ごしていてもいきなり曲が流れだして歌って踊ろうぜという瞬間はある。概念での話になるけど。ここで自分が乗っかれば、忘れられないドラマチックな一瞬が味わえるという瞬間は、どんな人生にもあると思う。そのときに「乗っかる」ことができるかどうかって、大体自分の事前準備とか、心づもりにかかっているんじゃないかと思う。

ミアはいつでもそれを探していて、いつでもそれを掴もうと思っているから、過剰に「よしッ」とか思わなくても踊り始められるし歌い始められる。オーディションで自分の話をして、と言われたとき、自分を中心に広がる物語を信じているから、「ちょっと待ってください」と言わなくても語れるし歌える。

いつ曲がかかっても、踊れる準備をしておきたいと思う。さあ歌って、と言われたときに、歌える詩を持っておきたいと思う。私が私の人生における主人公であることはずっと前から知っているけれど、ただ生きているだけではそうなれないんじゃないかと、最近思う。ふいにライトが当たったとき、ライトのもとに誰かが手を引いてくれたとき、そこに自然と歩み出たい。


2017/04/03/21:05

f:id:ashiyakomine:20170414231501j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231509j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231516j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231522j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231529j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231539j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231547j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231554j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231604j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231619j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231646j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231657j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231704j:imagef:id:ashiyakomine:20170414231713j:image

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naraku SWEET

ぼんやり目を覚ますと足が冷えていた。ウッ、とうめいてホテルのペラペラなシーツの中に足を引っ込める。簡素なシングルルーム、テレビもスポットライトも点けっぱなしで寝てた。
放りっぱなしだったiPhoneを手に取ると、DMMのダイレクトメールやクレジットカードの請求額確定のお知らせに混じって、メッセージが届いていた。LINEでもspメールでもGmailでもなくショートメール。ショートメール送ってくる相手なんか一人しかおらんから、相手はすぐわかる。090から始まる電話番号の下に、腹立つフォントで腹立つメッセージが浮かんでいる。

『着いた?』

バックライトの明るさで目がしょぼしょぼする。やっと時間を確認する。3時……。いや起きとらんやろ、と独り言を言いながら文字を打つ。

「おまえはよすまほ買えや」

雑誌のオフショットコーナーで、パカパカのガラパゴスケータイを使っていることをすっぱ抜かれたメッセージの主は、いやおれ、タッチパネルが反応せえへん特殊な体質やねん、と真面目な顔で言う。嘘つけ。どうやって駅でICOCAチャージしてんねん。大体タッチパネルやろ。ファンの子はそれを見て、やだショウゴくんかわいい、とか、自担はおじいちゃん、とか言っている。おめでたいぜ。ファンは盲目。ファンの語源はファナティック。
スマホを枕の向こうに放ってテレビを見やる。見たことのない関東ローカルのバラエティ番組をやっていた。巨乳のおねーちゃんがビキニでバナナ・ジュースを飲んでいる。いいねいいね。インスタントでええやん。シャワーを浴びて濡れたままの髪で寝こけていたので、すごい寝癖が付いているけど気にしない。枕に頭をはめこむと、スマホが震えた。LINEでもGmailでもなく、ショートメールが届いている。お前かい!起きてんのかい。

『俺、タッチパネルに愛されてないから』

相変わらずそれか。全然おもろない。ちょっと目が覚めてきた。パパパとキーボードに指を滑らせると、テレビの中のおねーちゃんがきゃあとかわいい声を上げた。

「着いた。東京さむいわ」
『明日何時からなん』

返事が早い。この時間までこいつ何してんねやろ。

「8時入りでゲネしてちょっと収録あって本番」
『寝んでええの』
「お前のせいで起きた」
『社長あった?』
「会ってへん 明日多分来るやろ」
『迎えきたん下川さん?』
「そう」
『下川さんめっちゃ眉毛細なってなかった?あれ絶対失敗』
「そこまで人の眉毛見ん」

普段大阪で仕事してると、ちゃんとした「マネージャーさん」ってかんじの人はおれへんけど、東京に仕事しに来るとフツーにそういう人おってビビる。下川さんはよく大阪から来る俺らの世話してくれる事務所のお兄さん。お兄さん……とおっさんの間くらいの人。イカツイけど最近生まれた次女にメロメロらしくて、今日も東京駅へ迎えに来てくれたタクシーの中で写メ見せられた。人んちのまだしわくちゃの子見てもカワイイかカワイくないかなんてわからんけど。赤ん坊は概念としてかわいいもんやから「かわいいですね」言うといた。でも下川さんの眉毛まで見てへん。ショウゴどこで下川さんの眉毛見てん?あいつ最近東京の仕事あったっけ?

部屋のすぐ下の道路は夜なのにずっと騒がしい。なんかビンの割れる音、バイクかなんかの走ってく音、いろいろ聞こえる。部屋の電気消して、テレビのあかりだけにすると、窓から光が漏れてくる。結構東京の夜好きやねんな。なんか、大阪とはちょっとちゃう。東京の方が、いつもおんなじ匂いがする。何月に来てもおんなじ、古い雑誌みたいな匂いする。胃の中で、さっき食ったセブン・イレブンのチョレギサラダが揺れている。どこでメシ食ったらええかわからんから、いっつも地元で食ってるもんとおんなじもん食ってしまう。太ったらあかんし。最近外食続いて顔丸なってる気するし。

ショウゴは、全然太らん。10年くらい、おんなじ塾通っとるくらいの頻度で会い続けてるけど、1回もぽちゃってるとこ見たことない。結構食ってるのに。差し入れの菓子も寿司も食うのに。日頃節制してるってわけでもなさそうなんに。不公平やな~。俺、わりとちゃんとしたもんをちゃんと食わなすぐ太る。しかも顔から肉つくから、すぐバレる。手紙で「カナエくん太りましたか?そんなところも好きです☆」って書かれる気持ち、あいつにはわからんやろな。Twitterで「【速報】嶋カナエ太る 嶋カナエ太る 嶋カナエ太る」って二重顎の変な顔で一時停止されたキャプチャ画像付きでツイートされてまう気持ちもわからんな。

まあ、ええか。お土産に東京ばな奈買って帰ったろ。ひと箱全部食わしたろ。

明日起きられたらええけど。一応部屋の電話機でモーニングコールを仕掛けて、スマホのアラームもかけた。絶対寝坊できん日に使う、U2の「Volcano」を朝7時に鳴るようにした。大事な仕事や。仕事はみんな大事やけど、それでも自分の中でドキドキする瞬間はある。心配になって、それでもなんか楽しみな仕事はある。何にも起きんと諦めてるところがちょっとあるから、天変地異でも起きそうな予感がちょっとでもすると、なんか嬉しくて楽しくなってしまう。さっきまでバナナ・ジュース飲んでたビキニのおねーちゃんにも、きっとそういう仕事があるんやろう。もしくは、あったんやろう。みんなそうやと思う。思いたい。ショウゴも……そうなんかな。

俺からのメッセージで止まってるところに、もう1個投げ入れてみる。

「お前、辞めるってほんま?」

画面を見つめても、何分見つめても、返事は来んかった。寝たんか、いや、絶対起きてた。とりあえず俺は次の日寝不足でドロドロの顔でU2聞きながら部屋飛び出したってことだけ、お伝えしとくわ。クソすぎ。

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スミマセン

自分を律することをテーマに頑張ってきましたが、だいぶ疲れました。食べるものに気を付けて、眠る時間に気を付けて、髪型に気を付けて、言葉に気を付けて、人に迷惑をかけないように頑張ろうと思ったのですが、全てを完璧にできたとして、それは何のためなんだろう?ととても疑問に思います。私がどんなに私比でよくできた人間になっても、それが他人比で好意を持つに値する人間でなかったら、どうしたらいいんだろうと思いました。私が私のことを好きになったとして、私は一人で生きていけるわけではないのだから、他の人から見て存在価値のある人間にならないと、どうにもならないのではないかと思いました。人の目が気になって、相手が何の気なしに言ったかもしれない言葉について一日何度も考えて、昼休みものがたべれず、どうしていいかわからなくて、本当に、私はなんで今まで頑張ろうと思えていたのかなぁと考えてもわかりません。世界はキラキラしているはずなのにちっともそれを見る余裕がありません。陰口を言われても自分らしく生きている友人がいるのに、私はなんでこんな些細なことで死にそうになっているのかわからなくて、情けないです。とても情けなくて申し訳ないです。何に対して申し訳ないのかもわからないけど申し訳ない。
好きな物を好きな時間に食べて、好きなことを好きなタイミングで言って、好きな服を着て、好きな場所で好きな仕事をして、好きな人とだけ付き合って、好きなものを好きなだけ買って生きていたら、破滅するんじゃないかと思うんです。でも、だから自分を律そうと思って、律するんですが、うまい力加減がわかりません。首がどんどん締まってあわてて手を離すと、ドロドロの汚いものがいっぱい出てきて汚れてしまう。みんな上手な力加減で、きれいで洗練されたブレスレットやチョーカーで自分を律している気がするんですけど、どうしても私にはそれが買えないみたい。お財布の中はからっぽです。何を書いたら自分が楽しいんだろう?こんなことを書きたいわけじゃなかったのになー。面白くなくてごめんなさい。気持ち悪いもの世の中に増やしてほんとすいません。

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3月のライオン(前編)-香車は後ろへ戻れない-


映画『3月のライオン』予告編②

とにかく幸田香子!!という感じの前編で震えた。原作を読んでも香子はとっても好きなキャラクターで、もっともっと彼女の内幕や自暴自棄なふるまいを見たいと思っていたけれど、紙の上から立ち上がってきた有村架純演じる香子が、まさにライオンのようだった。明るいキャラメル色の巻き髪をバサバサ振り乱しながら泣きわめいたり寂し気につぶやいたり、手負いの獣のようでよかった。

とても香子に感情移入して映画を見た。原作の漫画を読んでいると、川本家はあったかいなぁとか零くんは本当に強いなぁとか思うんだけれど、映画を見ていたら、川本家にはキモチワルイという感情が、零には「あなたはそうやって進んでいくのかもしれないけどね」という感情が強くにじみ出てきた。初めて会った、道端で酔って倒れていた男の子を家で寝かせて鍵を渡してご飯を食べさせて「おねいちゃんはガリガリな子をフクフクにするのが好きなの」と言っている川本家が本当に気持ち悪くて、なんだこのお化けみたいな家庭はと思ってぞくぞくしてしまった。3Dの川本家はびっくりするくらい空虚で、私には誰かに施しを与えることで、ポカンと口を開けていることでなんとか家族としての形を保っているように見えた。初詣、後藤と腕を組んだ香子が「今度はこの人たちなんだ」「得意だもんね、不幸ぶって人んちに踏み込んで、家族をめちゃめちゃに壊すのが」と言い放つシーン、「香子はヒドイ!」と思うべきなのかもしれないけど、「いや香子の言うとおりなのでは……」と思ってしまった。自分が香子だったら同じことを言っただろうし、家を出て他の人の家で幸せそうに笑っている零を見たらギタギタにぶち壊したくなるだろうし、零が暖かい家庭の仲間として暮らしながら将棋の世界ではプロとして戦っていくという夢物語のような現実を認めたくないだろうと思った。その横で驚いた顔をしている川本家の人たちにも心底腹が立つだろうと思った。

原作で、幸田家のお母さんは「零と幸田プロは同じ人種」のような発言をしたことがあるけれど、本当にそうで、零も幸田プロもちょっと普通の人間ではそこまでできないだろうということをする。それが強さだと言われたらそこまでなんだけど、その強さにはじかれた人たちは軌道を乱し、きりもみしながら地面に向かって落ちていく。
香子と弟の歩は、おそらく幸田プロに、将棋にちなんだ名前をつけられたんだろうと思う。「香車」と「歩」からとって、キョウコとアユム。そうして将棋の家の子供として生まれて、将棋を教えられて、強くなることを良しとして育ち、父親が連れてきた内弟子の男の子と激しくぶつかりながら大きくなっていく。将棋をする人間として育っていく。内弟子の方が棋士としての将来を期待されていると感じ取りながらも、戦うことを止めずに走る。そしてある日、その父に「将棋をやめなさい」と言われる。自分に将棋の駒の名前をつけた父にそう言われることの恐怖を、少し考えただけで手が冷たくなる。「辞めたくない」と食い下がる香子に、「将棋以外の人生もあるさ」と言い放った幸田プロを、勝負の世界に浸かった、私たちとは違う種類の人間だと思わざるを得ない。香子が自分で壁にぶち当たり、粉々になり、私はここまでなんだと諦めるのを見守った方が、どんなによかったかと思う。それで香子が人生の時間を無駄にすることになったとしても、香子が愚かに棋士を目指すことを諦めず、どうしようもない状況に立たされたとしても。幸田プロは将棋以外の人生なんて考えもしない人間で、そんな父親に「将棋以外の人生を歩みなさい」と言われたところで、ただ人生の指針をもぎ取られたような、そんな気持ちになるのは当たり前なんじゃないか。

将棋をして強くなることが当たり前だった女の子が、それを全部なくす。香子の「香」は「香車」の「香」。まっすぐ前にどこまでも進む、後戻りのできない駒の名前。ひどすぎる。私は香子が愛おしくてかわいそうで痛くてたまらなかった。どうしていいかわからない香子が木の葉のようにただよっているのが苦しかった。零の前に気まぐれにあらわれてひっかきまわしていく、それは全部香子の「生きたい」の叫びのように思う。愛して生きたい。もっと楽に生きたい。自分がここにいたいと思える場所で生きたい。香子はまだその何もわからない。そんな苦しさを自分もなんとなく知っているような気がして、それでまた涙が出た。

そういう「かわいそかわいさ」みたいなものを除いても、有村架純ちゃんの幸田香子はビジュアルとして美しくてキュンとした。9センチくらいはあるんじゃないかと思う黒いピンヒールを履いて、鳥のように朝の駅前を歩いていく香子のシーンがあるのだけど、そこを何百回も見たい。あと架純ちゃんがSK-2のプロモーションをしている関係か、後藤に頼まれて香子が買う化粧品がSK-2だった。原作ではこのとき買ってる化粧品はランコムっぽいんだけど、後藤はそのSK-2を入院中の奥さんの手に塗っている……こわい……フタが赤いジャータイプのクリームだったから多分ステムパワーリッチクリームかスキンシグネチャーメルティングリッチクリーム??定価15000円くらいと18500円くらい……それを手に塗ってもらえる奥さんヤバイ愛されてる。

www.sk-ii.jp